読み聞かせ※おるすばんできるかな【ディエロのおるすばん】caretaking※よい子のみなさんは、ひとりでおるすばんできますか？|※

読み聞かせ

おるすばんできるかな

caretaking※よい子のみなさんは、ひとりでおるすばんできますか？

【ディエロのおるすばん】

むかしむかし、ある村にディエロという少年がいました。ある日、お母さんが町へ出かけることになりディエロにこう言いました。「ディエロ、ニワトリが小屋から出ないように、ちゃんと見はっておくのよ。ニワトリが逃げてしまうとタマゴがたべられなくなるからね。」「それから、とだなの中のツボにはさわらないこと。うっかりなめたら死んでしまうからね。ツボにはドクがはいっていのだから。」本当はツボの中はおいしいジャムだったのですが、るすのあいだにディエロがなめてしまうといけないので、お母さんはそう言いました。

「わかったよ。ニワトリをちゃんと見はって、ツボにはさわらないよ。」ディエロがそうこたえると、お母さんはあんしんして出かけていきました。ディエロは、いいつけられたとおり、ニワトリ小屋をジッと見はっていました。でもそのうちに、ディエロはがまんできないほどねむくなってきました。いつのまにか、ニワトリ小屋によりかかって、ウトウトとねむりこんでしまったのです。

どれくらいすぎてからか、ディエロがふと目をさますと、ニワトリが小屋から出て、にわをあるきまわっているではありませんか。「たいへんだ！　こらっ、はいれ、はいれ」ディエロはあわてておっかけまわしましたが、ニワトリはにげまわって、小屋へはいろうとしません。「もう、おこったぞ！」すっかりはらをたてたディエロは、ぼうきれをひろいあげると、それをニワトリになげつけました。「クー、ククウ。」なんと、ニワトリはひっくりかえると、そのまましんでしまったのです。「たいへんだー！　ニワトリがしんでしまった！　どうしよう。」ディエロはしばらく、かんがえこんでいました。

「そうだ！ぼくがニワトリのかわりにタマゴをあたためてあげよう。」ディエロは小屋へはいると、ニワトリのまねをしてタマゴの上にすわりました。するとグシャグシャ。と、タマゴはみんなつぶれてしまったのです。「ああっ。タマゴがグシャグシャだ。お母さんがかえってきたら、どんなにしかられるだろう。えーん。えーん。」ディエロは大声をあげてなきだしてしまいました。

ディエロは、たくさん泣いたので、おなかがすいてきました。そこでニワトリのはねをむしりとって、ダンロの火でやいてたべることにしました。「そうだ。食事のときはブドウ酒もいるぞ。」ディエロはブドウ酒がおいてある地下室へおりていき、タルのブドウ酒をビンにいれはじめました。すると上の部屋からドタバタと、さわがしい音がします。「なんだろう？　だれもいないはずなのに。」ディエロは急いで部屋へもどりました。なんと二匹のネコがニワトリのとりあいをしているではありませんか。「こらあっ、ドロボウネコ！あっちへ行け！」ディエロはネコをおっぱらい、やっとのことでニワトリをとりかえしました。よしよし、これで大丈夫。ああ！　ブドウ酒のタルのふたを開けたままだった！」

あわてて地下室にもどりましたが、ブドウ酒はすっかりながれでてしまっていたのです。「どうしょう。お母さんがかえってきたら、どんなにしかられるだろう！　いくらおわびをいっても、ゆるしてはくれないだろうな。いっそ、そのまえに死んでしまったほうがいい。でもどうやって、死ねばいいのだろう？」そこでディエロは、とだなの中のツボにはどくがはいっていると、お母さんにいわれたことをおもいだしました。ディエロはとだなからツボをとりだすと、中に手をつっこみ、ドクをなめました。「あれ？　このどくは、あまくておいしいぞ。」ディエロはむちゅうになって、ツボの中のジャムをすっかりなめてしまいました。すると、なんだかねむくなってきました。ディエロは、どくがきいてきて、もうすぐ死ぬのだとおもいました。そこで、おしいれの中にもぐりこんでよこになり、そのままグッスリとねむってしまったのです。

お母さんがかえってきたのは、それからまもなくのことです。お母さんはあたりを見回すとビックリしました。とり小屋は空っぽで、タマゴはみんなつぶれています。地下室におりてみると、ゆかがブドウ酒でぬれています。「これはどうしたことだい！　ディエロや、どこだいディエロ！？」お母さんのさけび声をきいて、ディエロがおしいれから出てきました。「ああ、お母さん。おれはもう死んでしまったのだよ。おれはもう、お母さんとはなしもできなくなったのだよ。」ディエロはからになったジャムのツボをかかえて、シクシクとなき声をあげます。お母さんは、あまりのことにあきれかえりました。もう、ディエロをしかる声も、でなくなっていました。　　　(おしまい)